研究概要 |
1.血管新生因子検索のためのassay系の確立:卵漿尿膜を用いて漿尿膜上で生じる発生時の血管新生に及ぼす影響をみる方法ならびに牛大動脈および豚大動脈由来血管内皮細胞を培養細胞として維持し、【^3H】-チミジンのDNAへの取込みを指標とした細胞増殖活性に及ぼす影響をみる方法とをほぼ確立した。 2.カラゲニン肉芽炎症における血管新生因子:(1)カラゲニン肉芽腫の作成-ラット(S.D.系,6週令,雄)の背部皮下に空気8mlを注入後、2%カラゲニンを空気嚢中に注入し、炎症を惹起させた。カラゲニンを包むように皮下内に肉芽嚢が形成され、内部に浸出液がたまった。カラゲニン肉芽の形成過程に伴い皮下組織と形成した肉芽間および肉芽組織内に血管新生が認められ肉芽退縮に伴い血管系が消失した。(2)カラゲニン肉芽炎症浸出液中には、血管内皮細胞の増殖を促進する因子と抑制する因子が存在した。促進因子は非透析性で熱に不安定、低イオン強度下で失活するが、DEAE-セファロースカラムにより部分精製された。一方抑制因子は熱に安定な透析性成分であり、セファデックスG-15で画分1と2の2種に分離された。画分2は【A_(271nm)】に吸収極大があったが、画分1には認められなかった。画分2は蛋白分解酵素による処理には比較的安定であったが、アルカリ処理では失活した。画分2はセファデックスG-15ゲルと強い親和性があったが、アルカリ処理でその親和性を失った。(3)血管内皮細胞の増殖抑制活性には、細胞特異性があり血管内皮細胞の増殖を抑制したが、線維芽細胞の増殖には作用しなかった。カラゲニン炎症の経過とともにこの抑制成分の量が変動した。(4)抑制成分をさらに精製し、肥満細胞も含めたその因子の出てきた細胞をつきとめることが今後の課題である。
|