研究概要 |
正常人の赤血球にも加齢による老化現象が存在し, その寿命は約4ヶ月である. 加齢と共に赤血球の変形能力が劣化し, 遂にひ臓の細い細胞間隙を通過できず赤血球は崩壊してゆく. この老化に伴う生化学的変化の1つが, ヘモグロビンのヘム環の酸化開裂であると思われる. ヘム環がこのような構造変化を受けると, ヘム・グロビン結合が乱され, ヘモグロビン分子は不安定化し変性しそこで沈澱する. (ハインツ体生成). そのハインツ体が赤血球膜に結合して, 膜構造を変化させ, そして膜変形能力の劣化を招き赤血球が崩壊してゆくものと考えられる. 本研究は, この観点に立ってヘモグロビンのヘム環酸化開裂物質を赤血球中に検索し赤血球の老化がヘムの分解で初まるという機構を生化学的に明らかにするものである. 本研究において, 正常赤血球を硫酸-メタノール溶液で処理して, 2つのプロピオン酸残基, 2つのメチル基, そしてバレー位にメトキシ基をもつプロトペントダイオペント(PDP)のジメチルエステルを単離し, バレー位に水酸基がある上記のPDP骨格をもつジカルボン酸が, 赤血球中に存在することを初めて明らかにしたものである.
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