研究概要 |
本年度は、主に以下の3つの項目について研究を進めた。 1.マウス脳cDNAバンク作製と脳mRNAの脳内発現状況の検討-7週齢マウス脳よりcDNAバンクをλgt10ベクターを用いて作製し、脳によく発現されているmRNAに対するcDNAクローンを選択した。そして、1週齢及び7週齢マウス脳の大脳皮質,中脳等,小脳,延髄等の領域における発現状況を調べた。その結果、領域によって大きく発現程度の異なるクローンが数個存在した。このようにして、領域特異的マーカー遺伝子の取得も可能と思われる。 2.特定mRNA定量法の検討-脳内の遺伝子発現状況を探るためには、特にmRNAの定量的解析が重要である。ここでは、β-チュープリンmRNAの発現に注目し、ドットハイブリダイゼーションとRNA-RNAハイブリダイゼーションを用いた2つの新しい方法を検討した。その結果、両方法ともに信頼性の高い定量法であることがわかった。特に後者の方法は、試験管内で合成した一本鎖RNAをプローブに用いる方法で、cDNAクローンさえあれば適用可能であり、今後の幅広い活用が期待される。 3.形質導入系を用いた遺伝子発現検定系-神経細胞の刺激応答性を遺伝子発現制御レベルから解析するために、主に一時的形質発現系の検討を行なった。動物ウィルス遺伝子プロモーターとクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子の融合遺伝子をリン酸カルシウム法で培養神経細胞に導入した所、その発現が認められた。また、初代神経細胞でもその発現が認められた。培養条件を変えることによって、これら遺伝子発現の変化することも観察された。さらに、外来遺伝子を取り込んだ安定な形質転換神経細胞の樹立も可能であり、今後これら手法は神経系ネットワーク形成過程解析に有効な手段を提供するものと考えられる。
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