研究概要 |
癌細胞を分化させ造腫瘍性を低下, 喪失させ, 脱癌化を導く研究が新しい癌治療法の一つとして注目されている. 本研究ではヒト骨髄性白血球細胞のinvitro培養系で癌細胞をマクロファージ様細胞に分化させるタンパク性の因子を白血球培養上清から単離し, その性状を明らかにするとともに, 生理作用を調べた. また単離した因子の分化誘導作用を増強する方法を検討した. ヒト末梢血単核白血球をマイトジエンで刺激して得られた培養上清中の分化誘導活性を有する因子を単離したところ, 2つの因子が単離された. N-末端部分のアミノ酸配列中, 抗体による解析, 分子性状, 作用からそれぞれ, InferferonrとTumor Necrosis Factor(TNF)であることが判明した. 後者はマクロファージから産生されるので, マクロファージ前駆細胞にあたる骨芽球や単芽球細胞をマクロファージ方向へ分化誘導する事実は"posifive feedhack control"が存在する可能性を示唆している. TNFは分化誘導活性の他に腫瘍壊死作用, 線維芽細胞増殖促進作用, 顆粒球活性化作用等多様な生理作用を示し, 生体防御反応で重要な役割を演じていることが明らかになってきている. そこで遺伝子改変により, 種々のアミノ酸を置換したTNF分子の誘導体を作成し, より強力な分化誘導作用を示すTNFの分子デザインを試みた. C末端のLencineをphenylanineに置換したTNFに強い分化誘導活性が認められた. TNFの分化誘導作用は分化誘導活性を示す他のサイトカイン, IFN-γ, G-CCF, GM, CSF, IL-1と併用することにより, 相乗的に増強された. その際, TNFのリセプター数の増加が認められた. ProstaglandineE2, Retinoic acidと併用することによってもTNF作用は増強されたが, glucocorticoidは逆に抑制した. それぞれの作用機序は不明であるが, 分化誘導による制癌という観点から注目すべき実験結果と思われた.
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