研究概要 |
癌細胞を分化誘導することにより造腫瘍性を低下、喪失させ、脱癌化を導く研究が新しい癌治療法の一つとして注目されている。本研究では、ヒト骨髄性白血病細胞のin vitro培養系において癌細胞をマクロファージ様細胞に分化誘導するタンパク性因子をヒト単核白血球およびヒト線維芽細胞標本上清から単離し、その性状を明らかにした。また単離した因子の分化誘導作用を増強する方法を検討した。ヒト末梢血単核白血球をマイトジエンで刺激して得られた培養上清から2つの分化誘導因子を精製した。N末端部分のアミノ酸配列、抗体による中和、分子性状、作用の解析から、Interferon-fとTumor Necrosts Factor(TNF)であることが判明した。TNFはマクロファージから産生されるので、骨芽球や単芽球をマクロファージ方向へ分化誘導するという結果は、"positios feedback control"が存在することを示唆している。一方、ヒト線維芽細胞(W1-26VA4)培養上清から精製した分化誘導因子は、N末端のプロリンが欠落している以外はinterlek-Tn6(IL-6)と一致した。線維芽細胞由来の分化誘導因子(F-DIF)の分子量は、SDS-PAGEで約27,000であり、T細胞由来のIL-6の分子量21,000と異なるが、恐らく付加した糖鎖の長さの違いによるものと思われる。TNFとF-DIF(IL-6)は併用すると、強い相乗作用を示した。TNFおよびF-DIFは種々のBiological Response Modifess(BRM)と併用すると、単球性と骨髄性白血病細胞をマクロファージ方向に著しく分化誘導した。中でもvitamin Ds、レチノイド、Interferon-r、GM-CSF、IL-1、IL-4が強い活性を示した。本研究によって、免疫や炎症という生体防御反応のメディエーターとして重要な役割を担うサイトカイン(IFN-f、TNF、IL-6等)が、ヒト骨髄性白血病細胞に対し、分化誘導活性をもつことが明らかになった。サイトカインによる分化誘導作用の機構、併用による相乗作用の機構の解明は今後の研究課題である。
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