研究概要 |
側鎖構造の異なるビタミンD_2系とD_3系化合物の代謝と生理作用に関する比較研究を行い、次のような成果を得た。 前年度までに、側鎖構造の異なる各種ビタミンD_2及びD_3系化合物を合成し、ビタミンD結合蛋白質(DBP)並びにレセプターとの結合性を比較したところ、DBPとの結合性において、D_2系とD_3系との間に差があり、両系化合物の血漿中濃度を測定する場合、それぞれの標品を用意し、それぞれについて検量線を描き、これとの比較でなければ正しい定量値が得られないとの新知見を明らかにした。これらの実験結果を基に、血漿中のビタミンD_2系及びD_3系化合物の同時定量法を確立し、これを健常成人の血漿、授乳婦の血漿及び母乳などの試料に適用した。健常成人に対し一日400、国際単位のビタミンD_2を一週間経口投与した時の血漿中ビタミンD及び代謝物濃度の変動を調べたところ、ビタミンD_2及び24,25(OH)_2D_2は検出限界以下であったが、25-OH-D_2及び1,25(OH)_2については僅かながらも有意の上昇が認められた。現在、同量のビタミンD_2を長期に服用したときの推移について検討している。また、授乳婦に対して一日に1,200国際単位のビタミンD_2を4週間経口投与したときの血漿並びに母乳中のビタミンD_2、D_3化合物濃度の変動を調べたところ、母乳中のビタミンD_2濃度の上昇は有意であったが、過剰症が心配される25-OH-D_2、D_3や、1,25(OH)_2D_2、D_3の濃度はあまり上昇せず、1,25(OH)_2D_2についてはむしろ授乳期間の経過と共に減少し、授乳婦へのビタミンD補給が母子双方に対して安全な栄養補給方法であることを明らかにした。この他に、ラットにビタミンD_2、D_3を同時投与したときの血漿濃度推移を検討し、D_3系化合物がD_2系化合物よりも優位に存在するとの結果を得たが、この差は両者の代謝の差によるのではなく、腸管吸収の差によるものであるとの結論を得ている。今後は、毒性の差等について検討して行きたい。
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