研究概要 |
昨年度においては, 抗真菌剤の標的である酵母のラノステロール脱メチル化チトクロームP-450(P-450/14DM)と抗真菌剤の相互作用を検討し, アゾール基に結合した側鎖の構造がP-450/14DMとの特異的な結合を支配していることなどを明らかにしたので, 本年度はラット肝のチトクロームP-450に対する抗真菌剤の作用を検討した. これらの結果を比較することは, 抗真菌剤の選択性を評価するための指標となる. 本年度の知見は以下のとおりである. 1)ラット肝ミクロゾームによるラノステロール脱メチル化活性に対する阻害は, 抗真菌剤間で著しい差が見られず, 1〜10μMの濃度で阻害が見られた. この結果は, 酵母のP-450/14DMに高い親和性を示す抗真菌剤は, 酵母に対する選択性を有することを示唆する. 2)抗真菌剤はラット肝ミクロゾームに存在するチトクロームP-450の30〜50%と結合することが, 分光学的な解析によって示された. しかし, ラット肝ミクロゾームのチトクロームP-450は十分量の抗真菌剤の存在下でも速かに一酸化炭素と結合することが示され, これらのチトクロームP-450と抗真菌剤の結合は, 酵母のP-450/14DMと抗真菌剤の結合より弱いと考えられた. 3)ラット肝ミクロゾームによる薬物酸化反応は抗真菌剤によって部分的に阻害された. 薬物酸化活性を阻害する抗真菌剤の中には, 一部のチトクロームP-450に対してかなり高い親和性を有すると考えられるものも見出された. 以上, 本年度新しく得られた結果は, 抗真菌剤がラット肝ミクロゾームに存在するチトクロームP-450とも相互作用し得ることを示すものである. しかし, この相互作用は酵母のP-450/14DMと抗真菌剤の相互作用より弱い場合が多く抗真菌剤は酵母のP-450/14DMにある程度の選択性を有しているようにも思われた.
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