研究概要 |
我々のこれまでの研究により、ラット好塩基球細胞(RBL-2H3細胞)において、抗原刺激によって引き起こされる脱顆粒反応には、lgE受容体のβ-サブユニットと考えられる36Kタンパクのリン酸化が必須であることが判明している(Mol.Immunol 23 273,1986)。また、我々はRBL-2H3細胞の脱顆粒に対する、種々の異なる構造を持つサイトカラシン類の影響を検討した結果、脱顆粒反応を、1)促進するもの、2)低濃度(【10^(-7)】-【10^(-6)】M)で促進し、高濃度(【10^(-5)】-【10^(-4)】M)で阻害するもの、3)阻害するもの、4)全く効果を示さないもの、の4つのグループに区別することができた(Int.Arch.Allergy.Appl.Immunol. 78 237,1985)。 本年度の研究において、脱顆粒を阻害する上記2)及び3)のグループに属するサイトカラシン類の、36Kタンパクリン酸化反応に対する効果を調べた。 脱顆粒を阻害するサイトカラシン類(サイトカラシンA,ケトグロボシンA,D,J,アスポカラシンB,D)は坑原刺激にともなって起こる36Kタンパクのリン酸化を、脱顆粒を阻害する程度の濃度(【10^(-5)】-【10^(-4)】M)で阻害した。これらのサイトカラシン類はグルタチオンで処理すると、上記の阻害効果は見られなくなることから、SH基との反応性に関連があることが示唆された。我々はこれまでに36Kタンパクのリン酸化がプロテインキナーゼCにより触媒されることを報告しているが(Bochem.Biophys.Res.Commun. 125 867 1984)、これらのサイトカラシン類の、この酸素活性に対する影響を調べたところ、強く阻害することが明らかとなった。脱顆粒を阻害しないサイトカラシン類(サイトカラシンB,D,ケトグロボシンE,F)には、このような作用は見られなかった。 抗原刺激により、36Kタンパクのリン酸化に加えて、18Kタンパクのリン酸化も同時に起こることが判明した。このタンパクはミオシン軽鎖と分子量が一致し、【Ca^(2+)】依存的にリン酸化が起こる。詳細については、目下、研究を維続中である。
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