研究概要 |
我々はラット胎児脳の初代培養系を用い中枢神経細胞の生存に影響を与える成長因子につき検索を進めた結果、ラット海馬組織の抽出液中に高濃度の成長因子が存在すること、又、中隔核から海馬への線維であるfimbria fornixを切断すると14日目をピークに海馬由来因子の活性が増加することを見出した。そこでfimbria fornix切断後1日目と14日目の海馬抽出液を得、この中のganglioside量につき検索を加えた。抽出液中のganglieside量は極めて微量であったが【GD_(1a)】,【GT_(1b)】,【GM_4】は検出可能であり、【GT_(1b)】のみ14日目の抽出液中で約2倍増加していた。しかしながら培養液中に【GT_(1b)】を添加しても神経細胞の生存あるいは突起伸展には促進効果はみられず、むしろ抑制効果が著明であった。次に海馬抽出液を熱処理あるいはトリプシン処理してみると、神経細胞に対する効果が完全に失活した。このことから海馬抽出液中の因子はgargliosideではなく蛋白性の因子であると考えられた。そこで海馬抽出液をTSK-2000SWによるゲル濾過カラムにかけ海馬由来因子の分子量の推定を行なった。その結果、分子量約1〜2万,3〜4万および5〜6万の分画に活性物貭が回収された。このことは海馬由来因子が単一ではなく複数存在することを示唆している。現在更にイオン交換カラム,各種アフィンティーカラムを用い精製を試みている。
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