血管鋳型を作成する樹脂について、我々が使用する樹脂はGE社製シリコン系であるが、これを他の樹脂モデル作成時と同様に、心筋の溶解を水酸化ナトリウムを用いた結果、樹脂の軟化等の影響がみられた。そこで、溶解方法について種々の検討を行った結果、心筋溶解のために酵素(パパイン)とアルコール処理による方法が良好であることが〓われた。また、実験動物はラットを用い、その心臓を一度摘出し、大動脈を樹脂灌流システムへ吻合し、クレブス・リンガー液を灌流してbeatingを持続させた後、樹脂を注入する方法を行った。しかし、ラットの心臓が小さく、また吻合時に気泡が混入し易いことなどから灌流は心臓を摘出せずに生体中で行う必要性が〓われた。そこで、ウサギを用いて、その腹部大動脈からカテーテルを挿入して樹脂を注入した結果良好な樹脂モデルが得られた。 一方、我々は光ファイバ型レーザ・ドプラ血流計(LDV)を心筋内血流計測のために応用し、成犬の心筋内細動脈、細静脈の血流計測に成功した。 その結果、中隔枝血流は拡張期優位であるが、等容収縮期に有意な逆流がみられ、ニトログリセリンなどの薬物によって、さらに収縮中期にも逆流がみられた。また、静脈血流は収縮期優位で、等容収縮期に急唆に立ち上がり、収縮早期にpeakを有する波形を示したが逆流は認められなかった。この波形もニトログリセリンなどの投与によって2峰性となり、心筋内の血流は収縮期には動・静脈へのしぼり出しが、拡張期には心筋内への流入が心筋内血流の基本的なモードであリ、動・静脈はそれぞれの血流がレシプローカルな関係があることが〓われた。今後は微小血管の樹脂モデルによる心筋内血管の力学的特性と、光ファイバ型LDVによって心筋内血流特性の解析をパラレルに進めることによって、心筋内の詳細な血流動態などの力学的解析を進める予定である。
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