研究概要 |
本研究は、精神遅滞児の心理機能と生理反応との対応関係を用いた脳内神経メカニズムの解明と同時に最新の分析方法を用いて彼らの意織、感覚および学習について生理心理学的アプローチの開発をめざし、生理反応の空間的、時間的変化について総合的に検討することを目的とした。これを遂行するために、研究テーマに従って3人が個別的に実験研究をおこなうとともに、実験計画の作成、検討についてたえず討論をおこなって、相互の有機的なつながりを保つように努めた。芝垣は精神遅滞児の意識水準と情報処理能力に関する生理心理学的なアプローチの開発をめざし、清野は精神遅滞滞児の感覚に関する生理心理学的アプローチの開発をめざした。伊藤は深部電極法による動物のニューロン活動を指標として、精神遅滞児の学習に関する生理心理学的アプローチを関発し、彼らの心理機能に関する脳内機構の解明の研究をおこなった。具体的には次のような主題で検討をおこなった。 1.精神遅滞児の受動的活動と生理反応の空間的分布特性に関する検討 精神遅滞児の最も基本的な心的活動、すなわち受動的状況下における活動を研究し、次年度研究計画実験の基本的資料を収集した。芝垣は無刺激状態下での精神遅滞児の基本的覚醒・睡眠のリズムを検討するため脳波を多部位から導出し、その記録を高速フーリェ変換によるパワスペクトル分析をおこない、デルタ,シータ,スピンドル,ベータの周波数帯域について鳥瞰図法分析を試みた。結果、精神遅滞児の発達の遅れを推測する資料が得られた。清野は精神遅滞児のモデル動物(X線照射による小頭症ラット)で、学習の基礎となる遊泳不動テストをおこない、X線小頭群の新奇場面に対する適応が劣っていることを見い出した。伊藤は髭の変位に対する大脳皮質体知覚領のユニット反応をしらべ、精神遅滞児の脳活動を考える上での基礎となる脳全体にわたる神経回路網を検討した。
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