研究概要 |
各種遺伝性疾患の本態を究明するための試料供給源として、EBウィルスを媒介として樹立されるリンパ芽球細胞株(LCL)の需要が最近とみに高まっている。LCLの維持と管理に関する有効な指針を得ることを目的として、継代培養されたLCLの細胞遺伝学的性状を検索して以下のような知見を得た。LCLの由来した疾患は、家族性大腸ポリポーシス(FPC)、多内分泌腺腫瘍症第2型(MEN2),染色体異常症,染色体fragile site(FS)保有者など。 結果:1.今年度新たに樹立できた細胞株は、FPCの17家系由来の53株,MEN2の3家系由来の16株,染色体異常症とその家族7株,染色体FS保有者の 株であった。 2.MEN2家系由来のLCL8株(株樹立後2〜18ケ月間培養)の染色体分析を行った。樹立後4ケ月以内では付加的染色体異常は出現しないが、6ケ月以上継代した細胞株のいずれにも5〜30%の細胞に染色体異常(数的及び構造異常)が観察された。異常の多くは数的異常で、とくにNos5,8,15,12染色体のトリソミーが多かった。染色体異常の出現時期や頻度はLCLの由来(年令,性別,患者由来か健常者由来か)とは無関係と思われた。 3.FS保因者由来の5株における付加的染色体異常として、No.12染色体のトリソミーが特異的に多いことが注目された。構造異常における再結合部位が各々の細胞株に特徴的なFSの位置と一致する知見は得られなかった。 4.FS保因者由来のLCLにおけるFS発現率は概して低かった。B-3株(Brdu要求性のFS:10g25)のみが20〜60%の頻度でFSが検出された。次年度の課題:1.上記の特異的な染色体トリソミーが出現した細胞株について、軟寒天培地中での増殖能、ヌードマウス可移植性を検索する。 2.FS保因者由来のLCLにおけるFS検出率を上げるための実験条件を確立させる。
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