受容体結合測定法を用いて、高血圧自然発症ラット(SHR)と脳卒中易発性SHR(SHRSP)の延髄における【α_2】-アドレナリン受容体(AdR)を直接定量分析し、その特性を正常血圧のウィスター京都ラット(WKY)の場合と比較した。〔実験成績〕1.高血圧確立期(16-24週令)のSHRとSHRSPの延髄における【α_2】-AdR数(【^3H】-クロニジンと【^3H】-ヨヒンビンの特異的結合能のBmax値)はWKYの場合に比べ、20-30%有意に減少した。この延髄における【α_2】-AdR数(【^3H】-クロニジン結合能のBmax値)の低値は、高血圧発症前の幼若期(4-6週令)のSHRとSHRSPにおいても同程度(27%)観察された。2.6週令のSHRSPにクロニジン(300-500μg/kg/day)を21日間経口投与(飲料水に溶解)することにより、無処置のSHRSPに比べ、高血圧の発症の著しい抑制並びに延髄【α_2】-AdR数(【^3H】-クロニジン結合能のBmax値)の有意な低値が観察された。同様に幼若期WKYに同量のクロニジンを21日間、経口投与することによっても血圧の降下と延髄の【α_2】-AdR数(【^3H】-クロニジン結合能のBmax値)の有意な減少が認められた。クロニジンを21日間投与後3日休薬したWKYは反射性高血圧を示すと共に、延髄【α_2】-AdR数(【^3H】-クロニジン結合能のBmax値)の有意な低値が認められた。3.16-24週令のWKYとSHRSPの延髄において、背側部の【α_2】-AdR数(【^3H】-クロニジン結合能のBmax値)は腹側部の場合と比べ、高値を示した。SHRSPの延髄【α_2】-AdR数の低値は背側部と腹側部の両部位で観察された。〔考察〕SHRとSHRSPの延髄における【α_2】-AdRの低値は、高血圧発症前の幼若期においても認められたこと並びに降圧剤(クロニジン)処理によっても抑制されなかったことから、高血圧による二次的な変動とは考え難い。中枢性降圧剤のクロニジンは延髄【α_2】-AdRに作用して降圧作用を示すことから、SHRとSHRSPの同部位での【α_2】-AdR数の低値は、降圧性【α_2】-AdRないしカテコールアミン神経の機能低下を惹起するものと推定される。
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