研究概要 |
新しく考案した受動的回避反応における電気痙撃ショックcyclohexymideにより惹起した健忘モデル動物に対するγ-aminobutyricacid (GABA)誘導体からcalcium-4-(3,5-dihydroxy-3-methypenthylamide)butyrate(mevalonic-GABA)が, 従来臨床に抗健忘薬として使用されているCa-hopantenate(HOPA)より抗健忘作用が, 強力であることを発見した. そこで, MV-GABAの作用を更に明確にするために行動薬理的に検討を加えた. その結果, MV-GABAは, 一般的行動および攻撃行動に対して顕著な影響を与えなかったが, MV-GABA(1000mg/kg,i.p.)は, マウスの自発運動を著明に減少された. また, MV-GABA(500mg/kg,i.p.)は, 抗acetyl choline(ACh)薬(Scopolamine および Atropine), dopamine(DA)agonist(methamphetamine)による運動促進作用に対して拮抗作用を示した. また, MV-GABA(1000mg/kg,i.p.)は, pentobarbital-Naによる睡眠時間を延長し, strychnineによる痙撃に拮抗した. さらに, MV-GABAの作用部位を明確にするために, 脳実質内投与によって行動薬理学的と神経化学的な検討を加えた. その結果, MV-GABAは, 中枢AChおよびDA神経系に作用することが示唆された. これらの神経化学的な詳細な研究については現在まで不明確であるので後日報告する予定である. いづれにしてもMV-GABAは, HOPAよりも動物実験においては抗健忘作用が強力で, 低毒性の化合物であるので新しい脳機能改善薬として有効な薬物となる可能性があると思われる. 今後は現在, 研究が進行中の低酸素状態処置ラットの学習・記憶行動に対しての検討, 即ち迷路学習法におけるMV-GABAの影響についても検討し報告する予定である.
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