研究概要 |
現在までに知られている肝癌発症物質で最も強力な化学物質であるアフラトキシンB_1を特異的に代謝活性化する酵素分子種の特性を調べ, 肝癌発生との関連性を明らかにすることを目的として以下の研究を行った. まず発癌性試験に用いられている実験動物にPCBを投与し肝S9分画を調製し, アフラトキシンB_1の突然変異原性誘起を指標としてその活性を比較した. 調べた動物種のなかで, ハムスターが最も高い活性を有し, 次いでモルモット, ウサギが比較的高い活性を, またラット, マウス, スンクスは低い活性を有していた. ハムスターの肝S9分画の活性は, フェノバルゼタールでなくナチルコランヌレン投与によりリミクロゾーム分画に誘導されることがわかったので, ナチルコランヌレンを投与したハムスター肝ミクロゾームより, この活性を担っていると思われるチトロクロームP-450分子種の分離精製を行った. その結果, 主要な分子種が2種(FormI, II)とその他の分子種が1種(FormIII)が得られた. このうちFormIは分子量56000の低スピン型であるが, アフラトキシンB_1に対し, 高い活性を有し, その活性は, ハムスターの他の分子種や, ラットから得られた分子種の活性の20〜50倍も高かった. 更にアフラトキシンB_1の類縁化合物でありかつ強力な発癌物質であるステリグマトシスティン等に対しても強い作用を有していた. そこでハムスターから得られた主要分子種であるFormIおよびIIの抗体を作製し, Western Blotにより, これらの分子種が他の実験動物種の肝にも存在するかを調べたところFormIは他の動物種に存在せず, FormIIは, 殆んどの動物種の肝に存在することが明らかになった. 以上はハムスター肝に存在するアフラトキシンB_1を特異的に代謝活性化する活性はチトクローム分子種のFormIによるものでありこれがハムスターにのみ特異的に出現する事がわかった.
|