1.はじめに:本研究では、光電式容積脈波を利用した脈波伝播速度の簡便な計測法を開発し、実用化のための基本的検討を行った。 2.方法:脈波計は市販品を使用したが、付属プローブの着脱法が不安定で、記録波形の再現性を低下させる原因ともなっていると思われた。そこで種々のプローブを比較検討した結果、指尖にかぶせる方式のものがもっとも優れていることがわかったので、これを採用した。被験者は仰臥位とし、左手示指および同側同趾にこのプローブを装着し、脈波を記録した。このデータを256点/秒で4秒間A/D変換し、高速フーリエ変換により1〜6Hzの6つの周波数成分に分離した。次に、各成分ごとに、心臓から指および心臓から趾までの電伝時間の差を脈波の位相差から求め、これを2点間の距離で割った値(【t_1】〜【t_6】)を得た。また、これとは別に、脈波の立上がり点から求めた伝播速度(foot-to-foot velocity)の逆数(【t_0】)を同じデータから求めた。最後に、重回帰分析を用いて、【t_0】〜【t_6】と年令、血圧、血清脂質の各データ項目との関係を調べた。被験者は、各種疾患を含む250例である。 3.結果:【t_1】〜【t_6】と各データ項目との間の重相関係数は、年令との間で0.64、収宿期血圧で0.44、拡張期血圧で0.48、総コレステロールで0.23、リン脂質で0.24、中性脂肪で0.26、β-リポ蛋白で0.29であった。また、性別【t_1】、【t_1】〜【t_6】の8項目を説明変数として、年令との間の重相関係数を求めたところ、0.73と高い値が得らられた。 4.考察および今後の計画:本年度はプローブの改良、分析プログラムの作成、脈波伝播速度に影響を及ぼす諸因子の分析を行った。次年度では、さらに500例以上のデータを集め、健常者と各種疾患群との比較などを検討するとともに、本法を集団検診などに応用できるように、取扱いの簡単な測定装置を試作したい。
|