昭和61年度はマグネシウム及びカルシウムイオンの酵素的高感度分析法を確立すると共に、亜鉛の酵素的分析法に関する研究も少し行った。 【Mg^(2+)】‥‥‥【Mg^(2+)】はATPと複合体を形成し、それがHKの基質となるので、ヘキソキナーゼとグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PDH)を用い、これら2つの酵素反応によって得られたNADPHの340nmでの吸収増加を測定することによって、【Mg^(2+)】を定量する原理に基ずく血清及び尿【Mg^(2+)】測定法を確立した。血清・尿Mgを最も正確に測定することができるといわれている原子吸光法により得られた値と本法により得られた値とは、血清・尿ともに全てよく一致した。血清中にはタンパク質結合Mgも存在するが、【Mg^(2+)】はATPとのアフィニティが非常に強いため、結局は血清及び尿中の総Mgを測定することができた。HKは不安定であるが、耐熱性菌であるBacillus stearothermoplilus由来のグルコキナーゼ(GK)は非常に安定であるため、HKのかわりにGKを用いて血清及び尿【Mg^(2+)】の測定を行った。HK法と同様に原子吸光法によって得られた値とよく一致した。 【Ca^(2+)】‥‥‥キャベツ由来のホスホリパーゼDは【Ca^(2+)】によって活性化され、その活性化された度合をコリンオキシダーゼとペルオキシダーゼの2反応を用いて、発色系に導いて測定することによって【Ca^(2+)】濃度を求めるという原理に基ずく測定法を開発した。【Ca^(2+)】測定に使用されている【Ca^(2+)】電極法に比べて、本法は少量の血清量で測定可能である。血清のPHは保存中にアルカリ側に移動し、その結果、血清中の【Ca^(2+)】濃度が減少するため、【Ca^(2+)】電極法では保存血清は使用できない。しかし、本法は酵素法でPH7.4の一定のPHのもとで反応が進行するため、たとえ血清のPHがアルカリ側に移動しても、測定時に元のPHに戻るため、血清保存による影響を受けない。 【Zn^(2+)】‥‥‥62年度に詳しく検討する。
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