研究概要 |
この研究では, 急性白血病床例の治療過程における血球動態に細胞回転・コンセプトに基づく数理モデルを適用して, コンピューター上で治療効果をモニターする方法を開発し, prospectiveな臨床的応用を行うことを目的とし, 次のような成果を得た. 1.細胞回転を基礎とした白血病細胞および顆粒球動態の数理モデルの作成とその応用:G_0, G_1, S・G_2・Mおよび成熟細胞に対応する4つのコンパートメントで正常および白血病細胞の動態を記述した(精密モデル式の構築)モデル式は細胞増殖速度化学療法剤に関する指数(薬剤感受性, 薬剤濃度)などを含んでいる. 急性白血病のほか慢性白血病状態における細胞動態や薬剤による修飾のシミュレーションが出来, しかも臨床的な妥当性が推定された. 2.実用的な近似モデル式の構築とその応用:精密な数理モデル式から末梢血液中細胞数だけで記述する近似モデル式を案出した. 近似モデル式に実際の急性白血病床例の時系列の血球数および投薬量を代入して床例個有のパラメーターを決定し, 治療経過の実際と予測とを対比し, ほぼ満足すべき結果が得られた. 3.パソコン(NEC PC9801)への数理および近似モデル式の移植とその応用:数理モデル式は移植後種々の仮想投薬によるシミュレーションに用い興味ある所見を得た. 近似モデル式は日常検査から得た血球数データーベースと準リアルタイムに接合させ, 治療経過と近似モデルによる予測・シミュレーションをSYプロッター作図で対話的に比較し利用するシステムを完成した. 4.近似モデル式による急性白血病床例の臨床血液学的特性の評価:急性白血病40症例について近似モデル式を適用して, 得られたパラメーター値から臨床的評価に有用な事実が得られた. 特にG期通過速度, 薬剤濃度および感受性に関する指数は寛解例と非寛解例とで差がみられ, また臨床状態の悪化の評価と関係の深い指数の存在も指摘できた.
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