研究概要 |
血小板凝集能を全血インピーダンス法(本法)で測る場合、より自然条件下ではあるが反面、他血球の混在,血漿成分(ことに凝血系)の影響が予想され、成績判定に慎重を要する。【I】.血球成分の影響:(1)赤血球では貧血域でインピーダンス(Ω)は高値、夛血症域では低値、この傾向は洗浄あるいは固定赤血球でも同様で、血小板の粘着・凝集に対し過剰の赤血球は阻止的に作用する。(2)白血球でもnative,洗浄あるいは固定白血球の増加でΩは低下したが、赤血球に比し粘着・凝集への関与は複雑で、好中球由来の中性プロテアーゼの干渉も考慮の要がある。(3)血小板数との関係では他血球正常でも、Ωは血小板数と必ずしも単純に平行しなかった。本法と比濁法の相関も、血小板数正常群では高いが、減少群では低い。【II】.凝集による電極付着の凝血塊は組織像でみるとリストセチン>コラゲン>ADPの順でフィブリン・血小板網の形成,他血球のまき込みが強かった。Ωの大きさもこの順であった。このことはΩが単に血小板機能(一次止血能)のみでなく、凝血塊の強さ(二次止血能)も反映する可能性を示唆する。【III】.凝血能との関係:低凝固状態あるいは凝固異常症では各血球が正常域にあってもΩは低くなり、ことにADP凝集では著明であった。洗浄血小板を試料として粘着性凝固蛋白(フィブリノゲン,Fbg,フィブロネクチン,FN,von Willebrand factor,VWF)と凝集能の関係をみた結果、VWFのほか本法ではFNが、比濁法ではFbgが、より関与していることを明らかにした。本法が固相反応を、比濁法が液相反応をみているためと考えられる。 以上のように、本法は血小板の量的・質的異常のみでなく、血液成分と異物面との反応を総合的に表現しうると考えられる。成績判定に際しては、血算値と止血一次試験の結果とも合わせて慎重に行う必要がある。本法が血栓予知に有用か否か、今後の検討課題である。
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