研究概要 |
インピーダンス法による全血血小板凝集能測定法(全血法)の意義解明の検討を比〓法と対比させながら行っており, 本法が血小板以外, 赤血球および白血球の影響をうけること, 凝血能によっても大きく左右されること, また粘着性凝固蛋白(フィブリノゲン, フィブロネクチン, von Willebrand因子)にも左右されることを明らかにし, 比〓法に比しin vivoでの止血栓形成能異常(低下ならびに亢進)をより反映する可能性を示唆した. 今年度はさらに抗血小板療法におけるモニター法としての有用性を, 比〓法と対比させながら検討した. 対象は正常者50名と易血栓性疾患(脳梗塞, 糖尿病)40例で, 方法は2法の凝集能測定の他, PGI_2感受性試験(ADP凝集の50%阻止濃度IC50で求める)によった. その結果, 各種抗血小板剤のin vitro効果では, ticlopidineは比〓法で, indomethacinは全血法で, gliclazideは全血法で, より強い抑制作用が観察された. 薬物服用後のin vivo効果では, ticlopidine単独および他剤併用では, 両法で2週後には安定した効果がみられたが, 4〜8週後には全血法で前値に復する傾向がみられた. Indomethacinでも4〜8週後には同様, 全血法でインピーダンス値の旧値への変化が軽度ながら認められた. Hyperqaggregable stateの指標として, PGI_2感受性試験とエピネフリン凝集能の間には, コントロール不良の糖尿病者および脳梗塞患者では, IC50と凝集能はともに上昇し, 両者の相関性は全血法でγ=0.80, 比〓法ではγ=0.59と前者が優った. 以上より, 比〓法は液相における血小板凝集のみを反映するため, 見かけ上, 全血法より鋭敏に表現される. しかし, 血栓形成に関与する凝固系・血管系の因子は比〓法では捉えられず, この点, 本法の方が生体の総合的止血血栓形成能をよく表わすと考えられる. 但し, 本法による測定値の判読には, 薬剤の種類・服用期間・臨床経過・他の凝血学的ならびに血算の値も考慮する必要がある.
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