血栓予知法は数多く知られているが、それらは血小板系あるいは凝固線溶系のみを個々に表現するものであり、生体内の動的変化を忠実に反映するとはかぎらない。そこでわれわれは、61年度で先ず、従来の比〓法による血小板凝集能とインピーダンス法による全血血小板凝集能の比較を行った。その結果、前者に比し後者では血小板の凝集能のほか粘着能、凝固線溶能も反映することを、さらに粘着性凝固蛋白および赤、白血球の関与することも明らかにした。62年度は上記二法による抗血小板療法モニタリングの有用性に関して、糖尿病例を対象に検討を加えたが、結果的には経口糖尿病剤gliclazideの抗血小板作用においてin vitro、in vivoともにインピーダンス法の方がすぐれていた。また、二法によるエピネフリン凝集能とプロスタグランディンI_2感受性試験との相関性も、インピーダンス法で高かった。この成績は抗血小板療法のモニタリングにおいて、インピーダンス法の優位性を示すものである。63年度は比〓法が液相における血小板・血漿成分の反応を表わすのに対し、インピーダンス法は固相(血管壁)における血小板・凝固・線溶系を総合的に反映することから、血栓症における血管機能検査への応用を試みた。われわれはvenous occlusion(VO、上腕圧迫条件は中間血圧で5分間)負荷前後における(1)血管内皮由来物質ーー組織プラスミノゲンアクチベータ(tーPA)、プラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)、von willebrand因子抗原、ristocetin cofactor活性、(2)FDP、(3)血小板凝集能を指標として、脳血管障害例を対象に検討した。その結果、正常対照に比し患者群ではVO後で指標の(1)、(2)は有意に上昇し、比〓法とは逆にインピーダンス法で(3)は低下した。これらはtーPA優位によるためと考えられる。インピーダンス法で過凝固・低線溶を示した症例は術後、血栓再発作をみた。以上より本法が血栓予知のスクリーニング法として有用かも知れない。
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