研究概要 |
高中性脂肪血症と動脈硬化症とは密接な関係があることがよく知られている. したがって, 本研究は高中性脂肪血症の成因を明らかにすることによって, 動脈硬化性疾患の予防と治療に寄与することを目的とする. 高脂血症の成因を大きく分けて, 超低比重リポ蛋白(VLDL)の水解に関与する酵素側の変異と, VLDLすなわち, 基質側の構造あるいは組成の変異に起因する場合が考えられる. そこでまず, 酵素側について検討した. リポ蛋白リパーゼ(LPL)にはホスホリパーゼA(PLnseA)活性が含まれているが, その意義は充分に解明されていない. そこで, VLDLの中性脂肪(TG)水解に及ぼすLPLとPLaseAとの関連を検討するために, LPLとPLaseA活性の比の異なる標品を得ることを試みた. 精製したウシミルクLPLとliposomeをブレインキュベーションした後に, Heparin-Sepharose 4B Columnに結合させ, デキストラン硫酸濃度を0-120μg/mlまで増加させることによって, PLaseA/LPLの活性比の異なる標品を得ることに成功した. Triolein emulsionを水解するLPL活性を1μmole/hrと一定にしたときのVLDL-TGの水解は, PLaseA活性が高いほど促進された. このことは, VLDL-TGの水解機構にPLaseA活性が重要な役割を果していることが推測される. 次に基質側について検討した. trioleinとphosphatidylcholineの混合比の異なるvesicleを用いたとき, その比が10:1のとき, LPLによるtriolein水解が最大になった. またその比が5:1のvesicleに蛇毒のPLaseA_2を加えると, LPLによるtriolein水解活性は促進したが, PLaseC, Dでは促進が認められなかった. 以上のことから, VLDL表面のリン脂質の性状をPLaseAが変化させることにより, LPLによるVLDL-TGの水解を調節していることが推測され, 更にその調節機構と高中性脂肪血症との関係について検索を進めたい.
|