研究概要 |
高中性脂肪血症の成因を明らかにする目的で、ヘパリン静注後血清を用いて、肝性リパーゼ(HTGL)、リポ蛋白リパーゼ(LPL)およびホスホリパーゼA(PL-A)活性を高脂血症症例で測定した。症例総数202名、コントロール27名、IIa型48名、IIb型61名、IV型56名、V型10名である。コントロール群と比較して、HTGL,LPLおよびPL-A活性は、IIa型では有違差が認められなかった。IIb,IV型では、LPL活性は低下していたが、HTGLおよびPL-A活性には有違差が認められなかった。V型は、HTGL、LPLおよびPL-A活性が低下していた。次に中性脂肪(TG)量と酵素活性との関係を検討するために、IV型の血清TG値を150〜300、300〜450、450〜600mg/dlの3段階に分け、各々をIV_1、IV_2、IB_3とした。VLDL-TGの平均値は、IV_1で154±38、IV_2で274±32、IV_3で382±62mg/dlであった。VLDL-PLの平均値は、各々59±18、94±25、123±20mg/dlであった。VLDL-TGVLDL-PLはTG量の増加に伴って上昇した。すなわちVLDLのTG量に比して、相対的にPL量が少ない事を示しており、そのために、VLDLの水解が抑制されている可能性が推測される。次に酵素側より検討した。LPL活性はコントロールで3.41、IV_1で2.56、IV_2で2.30、IV_3で1.31μmol/ml/hrと低下し、HTGL活性は、コントロールで5.51、IV_1で4.76、IV_2で4.88、IV_3で3.97μmol/ml/hrと低下した。,いう活性は、コントロールで1.00、IV_1で1.00、IV_2で1.20、IV_3で1.31nmol/ml/hrと増加傾向になった。すなわち、VLDL-TG量の増加に伴い、HTGLとLPL活性は低下し、PL-A活性は増加するという逆相関関係が認められた。このことは、PL-Aが、HTGLやLPLと同一の酵素ではないことを推測させる成績である。またPL-Aが高中性脂肪血症と密接な関係があることが推測された。
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