カブトガニ凝固因子Gと発色基質(Bou-Leu-Gly-Arg-pNA)を組み合わせて開発した、(1→3)ーβーDーglucan(以下、グルカンと略)の微量定量法が、実際に深在性真菌症の診断にどの程度役立つかどうか検討した。グルカンの標準物質として市販のCurdlanをもちい、採取した血液検体は過塩素酸で前処理した。対象は臨床的に敗血症が疑われ、血液培養を行った183例で、いずれも白血病、悪性リンパ腫などの血液系の悪性疾患を基礎にもったいわゆるimmunocompromised hostである。このうち、血中のグルカン濃度が正常上限を越えたものが13名あった。一方、血液培養で真菌が検出されたものが4名(カンジダ3名、クリプトコッカス1名)、剖検により深在性真菌症であることが確認されたものが4名(カンジダ1名、アスペルギルス1名、菌種不明2名)あったが、いずれも血中グルカンの値が高かった。グルカン高値の残り5名も、抗真菌剤投与により臨床的に改善をみたことから、深在性真菌症と考えられた。以上の結果から、本法が深在性真菌症の診断に当たって、非常に鋭敏なスクリーニング法であることがうかがえた。また抗真菌剤による治療によって、臨床症状の改善とともに、血中グルカンの値が低下していくのが認められた。このことは、測定したグルカンが真菌由来であることを示唆しており、薬剤の効果確認をはじめ、経過観察にも本法が有用であることを示していた。 グルカンの標準物質として、カンジダ由来のものを抽出し、その精製を試みたが、力価・安定性にやや問題があり、本研究年度中に、満足のいく結果が得られなかった。
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