カブトガニ血球抽出液をデキストラン硫酸セファロースCL-6Bカラムで分画精製し、(1-3)-β-D-glucan(以下、グルカンと略)感受性のG因子とprocloting enzymeをとりだし、これに合成基質(BOC-Leu-Gly-AArg-p-nitroanilide)を加えて、グルカン定量用試薬とした。この試薬は、市販の(1→3)-β-D-glucanに対し良好な直線性を示し、感度・再現性とも優れており、pg/mlの濃度のグルカンの検出が可能であった。また本試薬が実際に、Candida apbicans、Microsporoam canis、Tricrophytomnobrun、Aaspergillus fumigatusなどの病原真菌多発糖と反応することを示した。さらに血液に添加したグルカンも、検体を過塩素酸で前処理することにより、ほぼ100%回収できることを確かめ、本法が血液検体にも適応できることを確認した。ついで白血病、悪性リンパ腫などの血液系の悪性疾患を基礎にもったいわゆるimmunocempromised hostのうち、臨床的に敗血症が疑われ、血液培養をおこなった183例について血中のグルカン濃度を測定したところ、13名に高値がみられた。このうち、血液培養で真菌が4名(カンジダ3名、クリプトコッカス1名)、剖検により深在性真菌性であることが確認されたものが4名(カンジダ1名、アスペルギルス1名、菌種不明2名)あった。残り5名も、抗真菌剤投与により臨床的に改善を見たことから、深在性真菌症と考えられた。以上の結果から本法が深在性真菌症の診断にあたって、非常に鋭敏なスクリーニング法であることが窺えた。また抗真菌剤による治療によって、臨床症状の改善とともに、血中グルカンの値が定価していくのが認められた。このことは、測定したグルカンが真菌由来であることを示唆しており、薬剤の効果確認をはじめ、臨床経過の観察にも本法が有用であることを示していた。
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