研究概要 |
我々は, 急性胃腸炎の原因菌として最も分離頻度の高いカンピロバクターによる感染症の迅速診断法を開発する目的で研究を続けている. C.jejuni由来の抗原を用いて以下のモノクローキル抗体(MoAb)を作製した. (1)加熱上清抗原に対するMoAb産生ハイプリドーマ6株(65KDに対するMoAb産生株4株, 45KDに対するMoAb産生株2株). (2)ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにより分画した主として65KDポリペプチドを抗原として得られたハプリドーマ25株(65KDに対するMoAb産生株1株, 45KDに対するMoAb産生株4株). (3)ソニケート抗原に対するMoAb産生ハイプリドーマ2株(45KDに対するMoAb産生株2株). (4)生菌に対するMoAb産生ハイプリドーマ3株(いずれも45KDに対するMoAb酸性株)計, 6株のMoAb産生ハイプリドーマの産生する抗体について特異性を検討した. 下痢を起こしうる16種の他菌種を用いて, 各々の交叉性を調べた. 多くの抗体は数種の他菌種と交叉したが, T-194抗体は, 菌体凝集およびmicro-ELISAで全く他菌種との交叉が認められず, カンピロバクター特異的であった. T-194株は, 65KD抽出抗原を用いて得られたハイプリドーマで, 産生抗体の種類はIgM, エピトープは65KDポリペプチドである. 現在, このT-194MoAbを腫水化中であり, ラテックス凝集反応や蛍光抗体法により, 検体中の菌(抗原)を直接短時間のうちに検出する方法を検討する予定である. また65KD抽出抗原を用いても45KDをエピトープとするMoAb産生株が得られたことから, 特異抗体を得るためには, 逆に得られたMoAbを用いてアフィニティカラムクロマトグラフィーを行い, 抗原を精製する必要があり, このことはC.jejuniの抗原解析の上からも興味深い. 現在, アフィニティーカラムクロマトグラフィーの条件を検討中である. 一方, Western blot法による抗体検出について検討した結果, 病態解析に有用であると考えられた.
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