研究概要 |
我々は、急性胃腸炎の原因菌として最も分離頻度の高いカンピロバクターによる感染症の迅速診断法を開発する目的で研究を続けている。今までにCampylobactor jejuni C_1株由来抗原を用いて16種の抗カンピロバクター・モノクローナル抗体(MoAb)を作製し、各々についての性状分析を行った。MoAbのほとんどは数種の他菌種と交叉したが、HE2ー194抗体は菌体凝集およびmicro-ELISAで全く他菌種との交叉が認められず、カンピロバクター特異的であった。抗原に用いたC.jejuniのみならず、C.coli C.fetus、C.venercalis、C.pyloriとも反応したのでカンピロバクター属特異的なMoAbで、この抗体は加熱上清由来65KDa抽出抗原を用いて得られたハイブリドーマ産生抗体で、イムノグロブリンクラスはIgM、エピトープは65KDaポリペプチドであった。Western blot(WB)法による抗カンピロバクター抗体の検討成績は、抗C.Jejuni抗ウサギポリクローナル抗体は加熱上清を抗原とした場合、45および65KDaに、患者回復期血清はIgG、IgM、IgAともに65KDaにメインバンドを示す多数のバンドを認めることができた。この成績は、65KDa抗原をエピトープとするMoAbをカンピロバクターの菌体または抗原検出に応用する意義を証明するものであり、以下の検討を行った。HE2ー194MoAbを用いた逆受身ラテックス凝集反応(reversed passive latex agglutination,RPLA)により、検体中(糞便)の抗原検出を行ったところ、分離陽性検体200件中198検体陽性(陽性一致率99%)、分離陰性検体60件中51検体陰性(陰性一致率85%)であった。本法は、カンピロバクター特異的で、感度は4×10^4CFU/ml、判定時間10分以内、特別な装置の必要もなく、安価であり、カンピロバクター感染症の迅速診断法として有用と考えられた。しかし、C.jejuniのみに特異的(種特異的)ではなく属特異的であるので、今後、ホルマリン処理または加熱処理菌体を用いてMoAbを作製するなどの検討を加える予定である。
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