研究概要 |
本研究は痴呆老人の日常生活上の障害(特にコミュニケーションの障害と異常言動)について、その実態を明らかにし、それらとの関連要因を宿主側と環境側から分析し、痴呆老人に対する看護ケアの方法を検討することを目的とした61年度よりの2年間にわたるものである。本年度の実施計画は施設と在宅の痴呆老人にみられる日常生活上の障害の実態を明らかにすることであったが主に施設入所老人の実態が中心となった。研究成果の概要は次の通りである。1.石川県のY特別養護老人ホームの入所老人274人のうち、長谷川式簡易知的能力評価スケールで10点以下(痴呆)の者は101人(36.9%)であった。また、性別での痴呆の割合は、男性で28.4%、女性で39.6%と女性に多かった。さらに年齢別での痴呆の割合は、60〜69歳では、18.4%,70〜79歳では26.8%,80〜89歳では44.3%,90歳以上は70.8%と年齢の増加と共に痴呆の割合は多くなっていた。2.入所老人の痴呆の程度と日常生活動作能力(ADL)の関連をみると、痴呆の度合の高い老人の方が、基本動作能力,意志疎通能力共に自立の程度が低かった。3.痴呆の度合の高い老人において、頻度が高くみられる日常生活上の障害は、年歳によって若干相違がみられるが、排泄,身の周りの整理,衣類の交換,入浴の面での障害が目立った。4.痴呆の程度の高い老人の異常言動には、徘徊,独語,奇声,暴言,作話,収集癖,妄想など一般的に挙げられているものであったが、これらの異常言動の出現は各々に特徴的であり、それまでの生活史との関係が示唆されるケースがみられた。また、異常言動の出現時には、緊張感が高まっている様子が感じられたが、62年度はさらに経時的に観察を行ない、これまでの成果をもとに、痴呆老人の日常生活上の障害と異常言動の緩和にむけての具体的な看護ケアを検討したい。
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