研究概要 |
従来よりストレス潰瘍の発生機序として粘膜血流の減少により粘膜防御溝が破綻し, 二次的に攻撃因子である酸, ペプシンの逆拡教を惹起すると報告してきた. しかしストレス負荷後の早期に胃粘膜病変が発生することが内視鏡により観察されたため, 早期の粘膜血流変化に着目した. 粘膜血流はストレス負荷と同時に急激な減少を示し, ショック状態を呈し, その直後より血流の改善を認めた. すなわちこの現象はあたかも血流の再潅流現象を意味し, フリーラジカルの関与を示唆した. そこで胃粘膜病変発生の機序との関連をみるために虚血, 再潅流現象の最も基本的なモデルとしてミニクリップで腹腔動脈をクランブし, 一定時間後, 解除したところ胃粘膜病変を認めた. そこで何らかのフリーラジカルの関与が想定されたため, 胃体部全層の一部を液体窒素にて瞬時凍結し, 電子スピン共鳴装置(FSR)法にてラジカルを検出した. その結果, 虚血中にはCoQ_<10>アニオンラジカルは有意に低下を示したが(pc_<0105>), 再潅流後では対照に比べ高い値を示した. さらにフリーラジカルの消去剤であるSODおよびカタラーゼを投与したところ, 病変の発生は予防し得なかったが, 軽度であった. またCoQ_<10>アニオンラジカル値は対照と同様の値を示した. 以上の成績によりストレス潰瘍の発生は極めて早期に起こり, 再潅流現象が原因として重要な因子であることが示唆された. 従って現在, 熱傷ストレスモデルを用い, 再潅流時の組織内CoQ_<10>アニオンラジカルの測定を施行中であり, また本症の治療および発生防止に対して消去剤の効果判定および他剤の影響についても検討中である.
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