研究概要 |
鶏の筋ジスam遺伝子は常染色体劣性であり、矮性dw遺伝子は伴性劣性遺伝様式に従うことが知られている。本年度はニューハンプシャー種(NH)のam遺伝子をWL種、WLdw種へと、次第に鶏体を小型化する個体へと導入した。正常鶏と矮性鶏を交配すると【F_1】での個体の表現型が交配の仕方でちがってくる。【F_1】鶏群では雌のみが小型化し、雄はdw遺伝子をヘテロにもつため、正常の大きさを維持した。dw遺伝子は鶏の成体重を雌において30%、雄において40%減少した。筋ジスam遺伝子の表現型はtlip testによる得点、血中CK活性を指標とし、最終的な筋ジス,ヘテロ,正常鶏の選抜は浅胸筋のbiopsy組織標本の病理判定によった。得られた結果を以下に述べる。 1)tlip test:三品種間で成長に伴う得点の推移をみると、鶏体が小型化すると高値を維持する。従って矮性鶏の得点は高く、症状が軽減してみえる。 2)血中CK活性:三品種間で大きな差はない。筋ジス鶏は高値を示す。 3)病理判定:白レグ鶏、矮性鶏へとam遺伝子が移行するに伴い、肥大線維は目立たなくなり、壊死線維や、その後の再生反応は見付けにくくなる。白レグ鶏と矮性鶏の筋線維は径を減じ、萎縮する。間質でみられる三品種間の大きな差は、脂肪組織の増生である。矮性鶏は4ケ月齢で筋束間、および内に多量の浸油をみ、同時に筋線維の消失が起る。 鶏の筋ジスam遺伝子はいずれの品種でも質的に同様な病変を示すが、その品種のもつ遺伝的背景の影響によって症状の発現は強調されたり、あるいは抑制される。鶏を小型化するdw遺伝子は、個体内のam遺伝子発現を強く修飾し、変更遺伝子として作用する。次年度はdw遺伝子の作用を明らかにしたい。
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