研究概要 |
大環状ヘテロシクロファンN,N',N'',N''',-テトラメチル-2,11,20,29-テトラアザ〔3.3.3.3〕パラシクロファン(1)のベンゼンおよびブロモクロロメタンとの包接体の結晶構造をX線回折法により決定した。1.C【H_2】BrClは塩化メチレン包接体と同型であった。空間群はC2/C,Z=8である。一方1・ベンゼンは空間群P【2_1】に属し、Z=4で2分子が独立である。1の包接体にはこれまで3種類の多形が見られたが、これは新しいものである。各包接体結晶中で1はその疎水内孔(8.7×8.0【A!°】)にC【H_2】BrClおよびベンゼンを取り込み、これらの1:1包接体は次々と積み重なって包接カラムを形成している。独立な2つの1・ベンゼンの構造はほとんど同じであった。1そのものの結晶解析を行なったところ、環構造は【C_2】対称を持つ長方形で包接体中の【C_4】対称を持つ環構造とは大きく異なり、1の環がフレキシブルであることがわかった。力場計算(MM2)により1および1の包接体のコンホメーション解析を行なった。【C_(2V)】の環が最安定で、これより約2Kcal/mol上に【C_4】を含む3つの環構造があり、さらに3.5Kcal/mol上にCiに近い環構造が存在する。NMRによると1は溶液中でN-C結合の回りでゴーシュ【→!←】トランス変換を行なっている。力場計算で得られた4つの最安定環構造がこのゴーシュ【→!←】トランス変換で関係づけられることを明らかにした。この4つの配座間の遷移エネルギーと遷移状態の構造を決めた。遷移エネルギーは6〜8Kcal/molである。1の包接体の最安定構造を力場計算より求めX線解析の結果と比較した。1・CH【Cl_2】では計算結果はX線からの構造と異なり、1・C【H_2】【Cl_2】では一致する。1・CH【Cl_3】の場合もカラムを仮定してその中にCH【Cl_3】を入れて計算すると安定構造は結晶構造と一致した。結晶中での包接体構造は結晶場に強く影響されるので溶液中の1:1包接体との関係は力場計算,スペクルデータを使って検討する必要がある。
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