ビタミンE(VE)欠乏の下垂体・性腺系に及ぼす影響について、組織学的に検討を重ね、VE欠乏による精巣の退行変性は下垂体の機能不全によるものでないと推定した。しかし、一方VE欠乏ラットでは下垂体の性腺刺激ホルモンの分泌が低下し、そのため精巣が退行変性するという報告もみられいまだ見解は一致してない。そこで本研究ではVE欠乏ラットを作成し下垂体及び精巣について組織学的に再検討するとともに下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモンFSHと黄体形成ホルモンLH)と性ホルモン(テストステロン)をラジオイムノアッセイ法(小型冷却遠心機使用)により測定し、それらの間の関連性について明らかにした。さらにVE欠乏ラットではテストステロンの合成が抑制されている傾向がみられたので、VE欠乏による性ホルモン合成低下の機構について性腺刺激ホルモンに対する受容体(レセプター)の感受性の面から検討した。 1.VE欠乏により、組織学的には下垂体の性腺刺激ホルモン分泌細胞は増数し、肥大が認められた。ゴルジー装置は環状を呈し、去勢した動物にみられる去勢細胞様の外観を示した。精巣はVE欠乏により精細管が萎縮し、発育各期の精細胞に退行変性が認められた。 2.VE欠乏ラットでは下垂体前葉からの性腺刺激ホルモンの分泌は増大する傾向が認められた。一方精巣ではテストステロンの分泌減少が明らかに認められた。これらの結果から、VE欠乏による 垂体の性腺刺激ホルモンの分泌の増加は精巣の障害からもたらされる性ホルモンの分泌不足によるネガティブ・フィードバックによるものと考えられた。 3.精巣の性腺刺激ホルモンに対する受容体(FSHレセプターとLHレセプター)について検討した結果、VE欠乏によりレセプターの親和性が減少することが考えられた。
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