研究概要 |
試料として(株)あぶまた味噌の江度味噌および西京みそを用いた。また、アルカリプロテアーゼインヒビター(APIと略記)の来源を調べるために、種麹菌として(株)桶口松之助商店より「ヒグチモヤシBF1号菌」を入手し、米麹を調製した。2種の味噌および米麹に3倍量の蒸留水を加え、氷冷下3分間ホモジナイズした後、60分間撹拌抽出した。冷却遠心機を用い、5,000r.p.m.で20分間遠心分離し上清を得た。次に、この上清を80℃の温浴中に20分間浸漬した後濾過し、濾液に硫安を加えて0.8飽和とした。生成した沈澱を遠心分離(8,000rpm×20min)により得た。このものにつき、Kunitzのカゼイン消化法等に準拠してAPI活性を調べたところ、米麹に最も強い活性が認められ、江度みそおよび西京みそでは、米麹の約1/4であった。そこで、以下の精製は米麹についてのみ行った。硫安分画で得た沈澱を0.05Mホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶解後、同緩衝液で平衡化したSephadexG-50(Syperfime)を用いるゲル濾過に付し、活性画分を得た。活性画分は0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したDEAE-セルローズ(トヨパール,650S)に付し、塩濃度を0から0.3Mまで直線的に変化させ精製を行った。 このようにして得たAPI画分をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動に付したところ、分子量24,000および19,000の2本のバンドが認められた。ポリアクリルアシドを用いる等電点電気泳動の結果、等電点は5.6であると推定された。また、37℃におけるpHの変化に伴う安定性を調べ、pH9が最も安定であり、60分間放置してもほとんど活性が変化しなかった。pH7および11では30分後に活性が約70%に減少し、pH3および5では約30%に減少した。従って、このAPIは、分子量約20,000,等電点5.6で、アルカリ側で安定なタンパク質であると考えられる。
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