本研究は、布の立体成型技法であるいせこみ操作の機械化をはかるとともに、立体化した布形状を定量測定することにより、従来、主観判定に依存していた布変形量の評価方法を客観化することを目的としている。61年度は機械操作による、いせこみの有効性を検討するとともに、いせここみにより生ずる布の変形を定量的に把握し変形に関与する力学特性を明確にすることを試み以下の様な結果を得た。 いせこみ操作の機械化は本縫い差動上下送り機構の利用を試みたが、いせこみ量の均一性、送り量の設定方法、ひずみの形状の点から検討したところ差動送り量はモーター回転速度の影響が大であるために、縫製中のいせこみ量の変動が大となる。また、差動量が同一の場合にも、布によりいせこみ効果が異なるため、現段階では差動送り量をいせこみ量設定の指標とすることができない。いせこみ量が布のいせこみ性能限界を越えた場合はひずみが発生するが、手操作では波状ひずみが発生するのに対し機械操作では折じわとなり、熱セットなどによる回復が不可能であるという問題点があることがわかった。 布の変形量は曲面の変曲点の位置および高さがいせこみ形成曲面の特徴をあらわす指標として有効であることがわかった。この実験の試料は構造因子を統一するために、基本試料を糊付けすることにより特性を変化させたが、糊付け濃度が高くなるほど、変曲点はいせこみ操作位置からはなれ、高さが大となった。この結果と糊付けによる試料布の特性値の変化との関係から、いせこみにより形成される曲面は布の曲げ、せん断特性および織糸に対し水平方向の圧縮抵抗値との相関が高いことがわかった。
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