研究概要 |
ごまをもっと広く菓子類に利用できるように, ごまから他のナッツと同様な香気を得る条件を検討する目的で, ごま特有香の発生要因について調べる事とした. まず, 加熱条件と種皮の影響について検討した. 種々の加熱条件や種皮の有無による加熱テストにおけるヘッドスペースぺ-パーのガスクロマトグラフィーを行った. ごま, 皮むきごまの香気濃縮物を調製しガスクロマトグラフ直結質量分析を行った結果, ごまから52成分を同定し, ごま香気濃縮物を匂いかぎスプリッターを装着したガスクロマトグラフにより分析したところ, 保持時間25分付近にごま様香気が感じられた. ごまは加熱条件よって香りの強さが変化したが皮むきごまでは香りの質が変化し, 種皮がないと, いかなる加熱条件でも特有香は感じられなかった. 皮むきごまは加熱条件によっては甘いナッツ香を発生し菓子材料として有効であると考えられた. 次にごまの各成分の役割を知るため, ごまを溶媒抽出によって, 5画分に分け, 個々にまたは混合して, 加熱条件を変え焙焼テストを行い, そのヘッドスペースペーパーをガスクロマトグラフにより分析した. 抽出残査画分の加熱香について香気濃縮物を調製し, ガスクロマトグラフ直結質量分析を行い, 69成分を同定, ごま, 皮むきごまと合計して88成分を同定した. ヘキサンによって分画した2画分は, 個々に加熱してもごま香は感じられないが混合して加熱すればごま香を生じ, 保持時間25分付近のピークが認められた. この成分は同定に致っていない. 抽出残査画分はこうばしい焦げ臭発生に関与すると考えられた. メタノール抽出画分は, 甘い香気を発生し, 加熱条件によっては, わずかにごま香が感じられ, ごま香発生に大きく寄与すると考えられるが, ごま香再現にはすべての画分が必要である事が判った. 今後は甘い菓子香発生に寄与する鶏卵画分の成分を詳しく検討する予定である.
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