研究概要 |
鶏卵やナッツを用いた焙焼菓子は、好ましい甘い香りを有する。 はじめに、甘いスポンジケーキ香に寄与する鶏卵成分について検討した。鶏卵を卵黄と卵白に分け、卵黄をさらに溶媒抽出によって7つに分画した。この内の2画分をさらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分画し、これらの画分の成分を薄層シリカゲルプレートを用いて検出した。溶媒抽出画分、これらからの精製成分および市販のアミノ酸類、脂質類を用いて、106種の焙焼テストを行った。これら焙焼テストのヘッドスペースベーパー(ヘッドガス)をガスクロマトグラフィー(GLC)により分析した。6種の焙焼テストから香気濃縮物を調製しGLCー質量分析により分析した。その結果、焙焼テストのヘッドガスより69種の化合物が同定された。甘いスポンジケーキ香発生には卵黄タンパク質画分と卵黄リン脂質画分が有効であった。タンパク質画分をリジン、アルギニン、グルタミン酸に代替し、グルコース、卵黄精製レシチンと共に加熱すると甘い香りを発生した。リジン、卵黄精製トリグリセリド及びグリコースを加熱しても甘い香りを発生した。これら甘い香りを有する焙焼テストのヘッドガス中には、スポンジケーキ様の香りを有する2,5ージメチルー4ーヒドロキシー3(2H)ーフラノンが含まれていた。 次に、ごまからナッツ香を発生させる条件を検討した。ごまを剥皮し、また溶媒抽出による分画を行い、ごま、皮剥きごま、ごまの5画分を用いて、70種の焙焼テストを行った。各画分やヘッドガスの成分分析法は鶏卵の場合と同じ方法を用いた。焙焼テストのヘッドガスから88種の化合物を同定した。皮むきごまと脱脂ごまが適当な加熱条件下、好ましいナッツ香を発生した。メタノール抽出画分はごま香ばかりでなく、焙焼テストのヘッドガス中に甘い香りを有するシクロテンと2種のフラノンが含まれ、スポンジケーキ香にも重要であると考えられた。
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