研究概要 |
植物性食用油脂の混合油の揚げ過程における持続性泡立ち現象のメカニズムを以下のように明らかにした。食用油脂として、大豆油、トウモロコシ油、米ヌカ油、ナタネ油、綿実油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、ラードを用いた。泡立ちは、、油脂を180℃に加熱の後、小麦粉団子を入れた時に生ずる泡の高さで測定した。まず、組み合せを変えて、上記二種の油脂を1:1の割合で混合し、泡立ち現象を調べたところ、ヤシ油あるいはパーム核油と他の油脂を混合した場合、激しい泡立ち現象が観察された。この場合、泡立ちの程度は、それぞれの油脂の混合比が、1:1の時が最も高く、1:1からずれるに従い低くなった。次に泡立ちの高かった混合油(混合比1:1)をエステル交換させ、トリグリセリドの分子種は異なるが、脂肪酸組成が同じ混合油を調製して、その泡立ちを測定したところ、いずれの組み合せにおいても、エステル交換前の混合油に比べてエステル交換後の混合油の泡立ちの強さは著しく減少した。以上の食用油脂の泡立ち現象をさらに深く追求するために、合成油脂(monoacid triglyceride)を用いたモデル系で泡立ちの解析を行った。中鎖系として、トリカプリリン,トリカプリン,トリラウリンを、長鎖系として、トリパルミチン,トリステアリン,トリオレインを用い、食用油脂の場合と同様に組合せを変えて二種の混合油(混合比1:1)の泡立ちを調べたところ、中鎖系と長鎖系との混合油で顕著な泡立ちを生じたが、他の組合せの混合油あるいはエステル交換油では、泡立ちはほとんど観察されなかった。以上の結果から、混合油の持続性泡立ちは、中鎖系と長鎖系の油脂が混合した場合に起こるが、その程度は、単に脂肪酸組成によって支配されるのではなく、異なる分子種の存在割合によって支配されることが明らかになった。
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