研究概要 |
沖縄の婦人の役割を明らかにするためには、郡市及び地域の家庭生活の意識と実態の両面から考察する必要があると考え、61年度は、近郊農村と純農村の調査を行なった。婦人の役割意識は、歴史的な家族制度,人間関係,婦人の社会参加,その地位・役割に影響を及ぼしている。特に地域生活において意識と実態の相違が見られたので、それについて報告する。 1.家庭生活における親族交渉のパターンは、双系的な意識が見られ、特に日常的な場では、婦人が親族交渉の中軸となり、非日常的な生活に関する事柄、例えば、位はいの継承,遺産の相続等については、根深い男系主義が見られ、依然として女性は疎外されていることが明らかになった。 2.地域における婦人の社会参加は、地域血縁の中で、冠婚葬祭的な行事を中心として行なわれており、例えば、自己開発や自己実現的な婦人の自由意志による、主体的な社会参加は少ないことがわかった。 3.この調査によって沖縄の地域社会がすぐれて血縁・地縁共同体であることがわかった。例えば、「困ったときは誰に頼るか」の質問に対して農家,非農家を問わず、また親子の世代をこえて、さらに地域をこえて、7割から9割までが「親・兄弟等の親族」となっている。それに対し、公的機関や制度への依存はせいぜい1〜2割程度である。さらに、冠婚葬祭等の諸行事にみる親族交渉の範囲は地域を問わず、100〜300人が全回答の約5割近くを占めている。そのことはそれらの諸行事が地域全体を巻き込んだ状況にあることを物語っている。日常生活の中での「ツイタチ,ジュウグニチ」(旧暦各月の1日,15日の祖先神への祈願)、「ヒヌカン」(「火の神」への祈願)等の伝統的な家族儀礼が忠実に守られ、受け継がれていることがわかった。
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