研究概要 |
本年は, 農村部との比較研究の視点から都市部の調査を行なったので, その結果について報告する. 1.家庭生活領域においては, 農村部とほぼ同様なパターンが見られた. すなわち, 日常的な場では婦人が親族交渉の中軸となり, 非日常的な生活に関する事柄, 例えば, 位はいの継承, 遺産の相続等については, 根深い男系主義が見られ, 依然として女性は疎外されている. 2.都市における婦人の社会参加は, 地域形成を目的とした組織的なものではなく, 趣味, 教養的ないわゆるカルチャー活動型である. つまり, モザイク的に形成された多数の自己啓発, レクリエーション, 学習グループ内での活動は盛んであるが, それらは必ずしも, 地域の統合や発展には寄与していない. 農村部同様, 自己開発や自己実現的な主体的な婦人の役割開発も個人的なものに終わる傾向にあった. 3.非日常的な冠婚葬祭を中心とした諸行事に関する婦人の役割は, 農村婦人と基本的に同じである. しかし, 都市部ではあらゆる行事にまたがって, 本来の血縁・地縁関係書に加えて, 職場関係者の参加が活発であり, 一部で規模においては, 農村部よりも拡大傾向が見られた. その背景的な要因として, 零細な同族企業の多い都市部では, 諸行事に対する企業関係者のかかわりが密度であると考えられる. これらの結果をふまえて, 長寿県沖縄における婦人の役割開発に関する課題として次の諸点が指摘される. (1)女性の生涯教育の視点に立った生活設計・自律・自立の確立 (2)男性の意識改革と役割の実践 (3)男女共同参加型の生活構造の確立 (4)生活自立を家庭・地域・学校教育を通して推進し, 高齢化社会への対応をはかる.
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