研究概要 |
小規模な生活排水処理には, 土壌の吸着能や土壌微生物の活性を利用した土壌処理が有用である. 近年, 非イオン界面活性剤, とくにalkyl ethoxylateやalkyl phenol ethoxylateなどの使用量が増加しているが, これらの土壌中での消失挙動を明らかにするため, 土壌環流法による生分解試験を行った. 腐植質土壌の表層土を風乾してカラムに詰め, 初濃度30mg/lで土壌環流を行ったところ, 環流直後に急激なTOC(全有機炭素量)の低下が起こり, 約40日のlag timeののちに生分解による消失が起こった. これらの結果から, 土壌環境中での非イオン界面活性剤の消失には, 土壌への吸着が重要な役割を演じていることが明らかにされた. そこで, 土壌および粘土への吸着性をNonyl phenol ethoxylate(NPE,n=10,15,20)について検討した. まず, 土壌の主要成分である粘土への吸着性を調べるため, カオリン, セリサイト, Ca-ベントナイトなどの粘土鉱物へのNPEの吸着等温線を求めたところ, いずれも低濃度でLangmuir型の吸着を示したのち, CMC付近で再び吸着量が著しく増加し, CMCでほぼ飽和に到達する等温線が得られた. 低濃度でLangmuir式から求めた単分子吸着の飽和量は, 25°CでのカオリンではEO=10,15,20について, それぞれ1,19,0.83,0.60μmol/m^2であり, セリサイト, Ca-ベントナイトについてもほぼ同じ値を得た. また, 10,25,35°Cの等温線では, Langmuir型の吸着を示す低濃度では温度の影響が小さかったが, CMC付近の多分子層吸着を生ずる濃度領域では, 温度の上昇により吸着量が著しく増大した. 土壌粘土(関東ローム)と腐植質土壌である黒土とについてNPEの吸着性を調べたところ, 土壌粘土への吸着挙動は, 粘土鉱物の場合にきわめて類似していたが, 黒土ではFreundlich型の二段階吸着を示し, 腐植物質への吸着は粘土とは異なることがわかった.
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