研究概要 |
野菜の煮熟による軟化の難易とペクチン質およびその他の細胞壁物質との関係についてダイコン,タケノコ,レンコンを用いて検討を行った。 1、ダイコン(n=39)の煮熟による軟化度と組織中のCa,Mg,Na,K,ヘミセルロース,セルロース,リグニン量の間に相関はみられず、煮汁のpHおよびペクチン質の組成の違いが軟化に大きな影響を及ぼすことが判明した。希塩酸可溶性ペクチン(pA;エステル化度の高いペクチン)を多く含むほど軟化しやすく、酢酸塩緩衝液可溶性ペクチン(pB:エステル化度の低いペクチン)を多く含むダイコンは軟化しにくかった。pA,pBはDEAEセルロースカラムクロマドグラフィーによる溶出パターンが異った。中性溶液中で煮熟した場合、エステル化度の高いペクチンほどβー脱離により分解しやすいため、pAを多く含むものほど軟化しやすかった。pBは煮熟後もある程度組織中に残存して煮くずれ防止に役立っていた。 2、(1)タケノコをpH4〜8またはシュウ酸ナトリウム溶液中で加熱すると他の野菜に比べて軟化しにくかった。(2)タケノコのペクチンはpA,pBが少なく、ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液中で加熱抽出されるペクチン(pC)および中性糖が多い点が他の野菜と異った。pH4で沈殿するヘミセルロースAにガラクツロン酸が約半量含まれており、その中性糖区分はキシロースが比較的多いのが特徴であった。(3)タケノコの食物繊維中にはヘミセルロースの占める割合が大であった。pCが比較的多い(ダイコンは約7%と少量)ことからも、タケノコのペクチンはヘミセルロースと共有結合していることも考えられ、そのため軟化しにくいと思われる。 3、レンコンのpA,pB,pCについてDEAEセルロースカラムクロマトグラフィー、セファデックスGー100によるゲル濾過、ガスクロによる中性糖の組成の定量などを行った。
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