研究概要 |
野菜の煮熟による軟化の難易とペクチン質およびその他の細胞壁物質との関係についてダイコン, タケノコ, レンコンを用いて検討した. 1.ダイコンの煮熟による軟化度が季節や部位により異なる原因について検討した. 冬ダイコン(12月, 1月収穫)が夏ダイコン(7月, 8月収穫)より軟化しやすく上部が下部より軟化しやすかった. その原因は, 冬ダイコンおよび上部に比較的エステル化度の高いペクチン質(PA)を多く含むため, ペクチンのβ-脱離が起こりやすく軟化しやすかったためと思われる. ダイコンの煮熟によるマセレーションには, 煮汁のpHやペクチン質の組成やエステル化度が影響しているが, 煮熟後のかたさにはヘミセルロースなどもある程度影響していることが考えられる. 2.タケノコのペクチンを35°Cの希塩酸溶液(pH2.0), 続いて酢酸塩緩衝液(pH4.0)で抽出(抽出液各々pH,pB)しても抽出量が少なく, 抽出後も総統かたさを維持していた. 最後にヘキサメタリン酸ナトリウム溶液で90°C, 3.5時間抽出(pC)を10回繰り返しても相当かたく, 同溶液で90°C1日抽出を10回繰り返して完全に軟化した. ダイコン, レンコンなどの野菜は同溶液1回抽出で完全に軟化した. タケノコの軟化しにくさの原因は, pCの性質および細胞壁内での存在にあるように思われる. pCは低エステル化度で, タケノコ中に最も多く存在し, ヘミセルロースなどとの結合の仕方が他の野菜と異なり, より強固なため煮熟により抽出しにくく, そのため軟化しにくいものと思われる. pA,pB,pCのDEAEセルロースカラムクロマトグラム, セファロースCL-6Bによるゲル濾過の結果は各区分により異なった. 3.レンコンのペクチンはpAが少なくpBが多かった. pCは収穫時期により異なり, 9月収穫の新レンコンには少なく, 12月, 1月収穫のレンコン中に多かった.
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