〈目的〉寝たきり老人の為の最適寝具を検討する為、体動を指標として各種寝具の比較実験を行なっているが、体動についての人体生理学的把握は未検討のまま残されていた。そこで本研究においては、睡眠時の脳波を測定することにより、体動のメカニズムを探ることとした。〈方法〉成人女性および寝たきり老人を被験者として、睡眠実験を行なった。成人女性については、睡眠中の脳波および体動を測定し、寝たきり老人については、体動のみ測定した。脳波測定における電極の接着は、頭部中央部とし、睡眠段階の判定はRechtshaffen & KalesのManualを基準とした。又、睡眠中の体動は、体動自動記録装置により記録した。〈結果〉1.脳波的睡眠段階が浅い時は、体動は多いいと考えられる成績を示した。2.寝たきり老人の中には、体動がほとんどみられない老人も多い。〈研究の反省と今後の展開〉体動のメカニズムを探ることを目的として、脳波測定に全力を注いでいるが、脳波測定は実験上の規制が多く(特定の実験室を必要とする点、電極を接着する点等)又、得られた記録の判断が非常に複雑であり、実験上の困難性を痛感している。しかし、体動を指標として快適性を考察する為には、脳波的裏づけが不可欠であり、困難を克服して、体動と脳波的睡眠深度との関係を明らかにしなければならないと考えている。一方、寝たきり老人の睡眠の記録も精力的に行なっているが、実験に協力していただく段階での介護者の理解が得がたい状態である。特別養護老人ホーム等の施設の場合は、比較的協力を得やすいが、在宅寝たきり老人を対象とした場合、協力を得ることは非常に困難である。しかし、寝たきり老人における寝具の問題は、施設寝たきり老人よりも在宅寝たきり老人の方により改良しなければならない問題があり、今後も引き続き協力を求めたいと思っている。
|