最終年度であるので、今までに収集、入力、印刷してきたクラウジウスの熱理論についての第1論文(1850)に始まる方程式を熱理論、気体論、電気理論について分析した。これらの分析によって以下のことが明らかになった。 1.R.Clansing(1822〜88)は物理量について数学的関数関係を求めようとする傾向が強い。 2.この背景としては彼の論文集の"数学的導入部"等がある。 3.彼の熱理論の背後には"力学的仕事"についての認識がある。すなわち仕事には道すじによらないものと、道すじによるものとが存在する。 4.クラウジウスのエントロピーdsは、最初は可逆過程の完全微分量とこてduに対応するものとして提出された。 5.クラウジウスは不可逆過程の存在を補償されない変換の存在として最初に認識(1854)し、のちに不等式S(ds)/T≦0で示した。 6.1865年に、不可逆過程のエントロピーの増加がN=S-S_0-S(ds)/Tで示された。しかしこれ以上の展開はなかった。 7.彼はやがて1866年には、可逆過程のみの理論に問題を限定している。 8.同上の傾向は、当時の一般的な可逆的な物理学観と密接な関係があろう。 9.とはいえ、クラウジウスが不可逆過程の理論を創造したのである。 10.何故それが可能であったかといえば、クラウジウスが熱の現象論"熱は高温から低温に(のみ)流れる"への理解と、"道すじによる仕事の存在"へ認識をもっていたからであると結論できる。(2/25189)
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