研究概要 |
昭和62年度においては, 前年度の教育実習における体育の授業を記録できた者の内, 赴任後も授業の記録が可能な3名について, 赴任校での体育の授業における教師の教授行動を記録した. これらの授業は, 小学校1年1クラスと3年クラスであり, 約3週間毎に各赴任校に出かけて記録した. ただし, 水泳とスキーを教材として授業は除いた. 昨年度に教授行動の分析のために教師の身体活動をカテゴリー化したが, 今年度さらに検討した結果, 教授行動の分析の観点を設定しなおし, 映像と言語記録の両方のデータをもとに, 学習内容・対象・言語か動作か・教授の意図についてカテゴリーの分布状況を集計した. 3名の新任教師は, いずれも大学在学中は小学校教員養成課程にあり, かつ保健体育科に所属しており, 多くの新任教師の中では, 教師自身の運動経験は豊富であるといえる. しかしながら, 4月から5月においての授業ではいずれの教師も子どもたちの掌握が不十分であり, 管理的教授行動(集合・整列など)に時間がかかり, 子どもたちの技能を高めるための工夫を試みるまでに至っていない. ところが, 春の運動会(5月末実施)を過ぎたころから, 子どもたちの行動に落ち着きが出て, 教師の個人差はあるが, 秋になってくると, 集合や整列もスムーズになり, 教授活動には運動学習についての指導がスムーズになされるようになった. 教育実習においての授業よりも, 新任の年度当初の授業では混乱が多く, 次第にスムーズに教授活動がなされていく過程が, 1年目(赴任後)においても生じていることがわかった. 今後さらに, 教師2年目の授業において, 運営方法ばかりでなく, 教授内容の点で特に子どもたちの実技能力を向上させるような面での変化が生じるかを, 引き続き観察, 検討していくものである.
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