研究概要 |
1<目的>19-23才の男子陸上長距離選手について, 低圧環境制御装置による高所順応トレーニングを実施し, 呼吸循環系機能および運動能に及ぼす影響を, 対照群との比較で明らかにしたい. 2<方法>男子長距離選手10人を実験群および対照群各5人に分けた. (トレーニング前のVo_2maxは各群共平均75〜76ml/kg/分), 20°C, 60%の低圧環境制御装置を用いて4,000m相当高度(462Torr)下で70〜80%Vo_2maxで30分間のトレッドミル走行(8.6%勾配, 平均速度124m/分)を週2〜3回で約10週間(平均23回)継続した. 一方対照群はトラック走またはロード走を毎日5〜6km実施した. 3<結果と考察>1)4,000mにおけるトレッドミル走行速度に対するRPE(主観的運動強度)は, 対照群では変化がないのに対して実験群ではトレーニング後の120/180m/分の各走行速度に対し有意な低減を示した. 2)Vo_2maxはトレーニング後に4,000mで両群共に5〜6%の増加傾向を示し差が認められない. 3)トレーニング後のVo_2に対する血中乳酸濃度は, 4,000mにおいて対照群ではトレーニング前値とほぼ同値であるが, 実験群では低下を示し右方移行傾向にあった. すなわち4mMol/l乳酸濃度に対するOBLA=Vo_2は, トレーニング後に実験群は7%の増加傾向を示した. 4)血中2, 3DPG量は実験群では常圧下および4,000mの安静時で7.2%, 5.1%の増加傾向を示した. 5)10km走行記録は, トレーニング後, 実験群では, トレーニング前の平均記録298m/分に対し312m/分と約5%の有意な改善を示した. 一方, 対照群ではトレーニング前後で明らかな変化が認められなかった. 本高所順応トレーニングによる酸素解〓曲線の右傾化に伴う組織への酸素供給の改善が, 無気的作業〓値(AT)のOBLA-Vo_2および2, 3DPGの各約7%の増加傾向と10kmの走行記録への改善をもたらしたものと考えられる.
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