研究概要 |
1.上級者と初級者の予測能力および判断の際の眼球運動の相違 上級者はパス・ロブ判断では、インパクト6コマ前(b6)で80%,4コマ前(b4)で91%,2コマ前(b2)で97%と、相手の打球以前にきわめて高い正答率を示した。しかし、パスのコース判断はこれよりも難しく、b6から順に65%,78%,63%と比較的低い値であった。ただし、インパクト(i)では93%と高くなる。一方、初級者は両判断とも、b6からiのいずれも、上級者よりも約20%低い値であり、予測能力の劣っていることがわかる。判断の際の眼球運動の測定は、打球動作提示のスピードを「通常」と「スロー」(1/10)の2とおりで行なったが、被験者がどこに注意しているかを把握するには後者のほうが適切であった。上級者も初級者もラケットとボールを注視しているが、モデルの身体については、上級者は肩(横向き姿勢の深さ)を、初級者は足(スタンスの向き)を注視しており、ここに違いがみられた。 2.指導プログラムの作成とそのトレーニング効果 パス・ロブ判断では予想打点に対する右手の高さ,ラケット面の向き,動作の力強さなどから、コース判断では横向き姿勢の深さ,ボール位置との関係に基づく動作やスイング開始のタイミングなどから、打点の前後位置,打球時の面の向き,スイング方向を予想するような指導プログラムを作成した。次に初級者をI群とK群の2つに分け、I群にはこれに基づいて判断のポイントを指導するやり方で、K群には結果の知識を与えるだけのやり方でトレーニングを実施した。トレーニング後、I群の正答率はパス・ロブ,コース両判断とも上級者のレベルまで向上した。一方、K群ではパス・ロブ判断にだけ効果が認められた。眼球運動も、I群では足よりも肩を注視する変化が認められており、本研究で作成した指導プログラムは、初級者の予測能力の向上に有効であるといえる。
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