本研究では、イノベーション伝播を媒介する個人をゲートキーパーと呼び、とくにライフスタイルといった観点からそうした人々の行動特性を見分け、かつ影響の流れを描き出すことを目的とした。 研究を進めるにあたっては、現代の典型的なスポーツ・イノベーションとして、エアロビクスなどに代表されるような新しいかたちのエクササイズを考えることとした。標本には、大阪市内の女子短大生546名を選び、質問票を測定用具に用いた。 ライフスタイルの測定項目は因子分析によって整理され、ゲートキーパーの抽出にはソシオメトリー法が適用された。推定されたライフスタイルの10因子を説明変数に使用しながら、ゲートキーパーである可能性の大小について判別分析が試みられた。さらに、ソシオメトリーの選択肢がどこに向けられているかを、相関図によって分析した。用いられた変数は、指名者と被指名者それぞれの因子得点である。 結果は次のように要約される。 1)ゲートキーパーは他の人に比べて、スポーツ・健康志向が強く、社交的であり、かつ個性化志向が強い。 2)スポーツ・健康志向という点では水平的影響がみられ、その程度が同じような人々同士の間にソシオメトリーの選択肢が結ばれる傾向がある。 3)社交性、個性化志向には垂直的影響が観察され、社交性の高い者から低い者へ、そして個性化志向の強い者から弱い者へと、イノベーションがトリックル・ダウンする可能性が伺える。
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