研究概要 |
長期水泳訓練が喘息児の体温,エネルギー代謝,肺換気機能,血液性状およびホルモン分泌に及ぼす影響を把握し、喘息児の健康づくりを目的とした水泳の有効性について検討し報告する。 被検者:小児科医より紹介された男児17名(6〜11才,軽症10名,中等症4名,重症3名),女児6名(7〜11才,軽症3名,中等症2名,重症1名)の合計23名である。 水泳訓練:昭和61年11月〜昭和62年3月(継続中),週2回,各2時間。結果:(1)体温:水中自転車エルゴメーターによる運動負荷5分頃から中・重症児に0.3℃、退水5分後0.6℃の適腸温の低下を認めた。(2)エネルギー代謝:水中運動負荷開始時には上昇したが、その後徐々に低下し、体温の低下と正の相関)を示した(γ=0.569)。(3)肺換気機能:運動誘発性喘息が認められ、運動後10分頃にはFEV1.0が平均15%低下した。(4)血液性状・赤血球数と白血球数が異常に高い値を示し、ヘモグロビン量およびヘマトクリット値の安静時、運動直後および10分後には有意な変化はなかった。しかし血中乳酸は、運動10分後においても高い値を示したまゝであった。乳酸脱水素酵素LDHの異常な高値が全ての喘息児に認められた。(5)免疫グロブリンIgE:標準値を異常に超えており、しかも運動により更にその値は増加する傾向にあった。(6)ホルモン:ノルアドレナリンは、運動直後増加したが10分後には正常範囲へ戻っていた。アドレナリンに変化は認められなかった。 まとめ:現在水泳訓練は継続中であるが、肺換気機能およびエネルギー代謝に改善がみられ水泳は適切な運動であると言える。しかし、次年度には正常値から逸脱している項目、特に血中乳酸、LDHと体温,および水泳とカテコールアミン,IgEとの関係について、健常児と比較しながら検討を加えていきたい。
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