健常な男子大学生を対象として運動時の血清グルコース、遊離脂肪酸、インシュリン、及びグルカゴンレベルに及ぼす活動期多食型での高脂肪食及び高炭水化物食摂取の影響について検討を行った。遊離脂肪酸の血中濃度の上昇は、エネルギー基質としての細胞での脂肪酸利用をより促進することと密接に関連することが知られている。本実験において高脂肪食期で運動後の血清遊離脂肪酸値が増加する結果が得られ、運動時におけるエネルギー基質としての遊離脂肪酸の利用が活性化している様子にあることがうかがわれた。さらに運動後の血清グルコースレベルはいずれの摂食期においても減少を示したが、その程度は高脂肪食期の方で大きかった。このことは高脂肪食期における遊離脂肪酸の利用が促進された結果、phospkofructokinaseやpyruvate dekydrogenaseなどの解糖系の酵素活性が抑制されたことにより、運動時のグルコース利用低下がもたらされた可能性が考えらる。また、本研究においては、インシュリンとともにその拮抗ホルモンであるグルカゴンについても検討を行った。Kellerら及びWoodsideらは脂肪酸代謝におけるグルカゴンをインシュリンの作用について、絶対量よりむしろその比率が極めて重要であると指摘している。本実験結果における血清インシュリンについては、いずれの摂食期においても各々同様の反応を示し、両摂食期の間で顕著な違いは認められなかった。一方、血清グルカゴンに関しては、高脂肪食期の方が高炭水化物食期に比較し増加傾向の様子にあることがうかがわれた。グルカゴンの生理作用としての役割の一つは、ホルモン感受性リパーゼを活性化し、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出を促進させることにあるといわれている。本研究結果で認められた高脂肪食期における運動負荷後の遊離脂肪酸レベルの増加はそのことと関連している可能性があるものと思われる。
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